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2012/06/24

glitchGROUND/子どもあそびばミーティング(1)


6月8日〜6月10日にかけて、山口情報芸術センターYCAMへ。

ここで行われている教育普及展「glitchGROUND」のプロジェクトに参加しています。会場内に設置された、音響、照明、映像などの装置が埋め込まれたインスタレーション型の公園「コロガル公園」の使い方を、子どもたちと一緒に考える「子どもあそびばミーティング」の進行をするのがぼくの今回の仕事でした。レポートをまとめて書くのが難しそうなので、感じたことのメモというかなんというか。


YCAM教育普及 
―メディアを使う、知識のアップデート

YCAMの教育普及活動は、YCAMで制作/発表されるさまざまな作品を鑑賞するという経験が、より高い価値のものになるように、作品のテーマに沿った鑑賞方法を創出し、常に新しいミュージアム体験の設計に努めています。また、「表現」「身体」「コミュニケーション」「社会」といったYCAMが重要視する要素と「メディアテクノロジー」の関係性に注目し、メディアリテラシー教育につながるような、オリジナルワークショップの研究開発もおこなっています。開発したワークショップはパッケージ化し、山口市内を中心に国内外の文化施設/教育機関で積極的に実施しています。
(YCAM4月プレスリリースより)


ケータイで写メを撮りあう鬼ごっこのような遊びをつくる「ケータイ・スパイ・大作戦」、検索エンジンの使い方を学ぶ「Search'n Search」、様々な身体の動きのデータベースをつくる「コトバ身体」など、人間の身体と、日常的に使われているケータイやインターネットの関係性、あるいは監視社会やデータベース化された世界をテーマにしたYCAMのワークショップはどれも個性的。YCAM InterLabで開発された技術や、メディアアートやサウンドインスタレーションの展示内容と関連づけながら開発されていくワークショップは、ドキュメント冊子に用意するものやプログラムがまとめられ、他の施設(メディアセンターや学校など)でも実施できるようになっている。
※内容は「glitchGROUND」展のウェブサイト、またはドキュメント冊子「YCAM WORKSHOPS」に詳しい


- メディアと出遇う体験、日常へのフィードバック

ケータイ、データベース、サウンド・・・新しいメディアやテクノロジーは次々に登場し、ぼくたちの生活に流入してくる。入り込んできたものをいかに使いこなすか。ワークショップでの体験が日常にフィードバックされ、メディアを使うこと・知識を備えることが楽しい、もっと知りたい!という感覚を強めていくように設計されている。「ケータイ・スパイ・大作戦」での体験などは、日常への影響も色濃いはずだ。

そして驚くべきは、YCAMのワークショップはその対象年齢が「小学校4年生〜一般」と幅広いこと。エデュケーターの菅沼さんいわく、「新しいメディアの使い方を学ぶのに、おいも若いもない。共に使い方を学ぶ場が大事」とのこと。確かに、iPHONEなんかは子どものほうが操作に慣れるのが早く、大人が逆に教わっていたりする。新しいメディアにおいては、教える/教えられるの関係は逆転している場面も多くなってきている。


- 知識のアップデート、プラットフォーム

さらに興味深いのは、先にも述べたように、YCAMだけの特別なものではなく、他の施設でも実施できるような仕組みになっていることだ。パッケージ化され、どこでも汎用できる「オープン・ソース」になっている。ワークショップ自体がある種の「ルール」や「プロセス」をつくっていくものであるため、ワークショップの内容自体も、実践が重ねられ、フィードバックを得て、アップデートされる仕組みになっている。単なるコンテンツではなく、ある種の集合知をつくっていくための「プラットフォーム」の設計にもなっている。

こうしたYCAMのエデュケーションチームが創りだしてきた、新しいメディアとの遭遇の「体験」、あるいはメディアの使い方をアップデートしていく「プラットフォーム」が集約されたものが「コロガル公園」である、と思った。そしてそれはワークショップのような時間が限定されたイベントではなく、恒常的に設置された「環境」として提出されている。



「コロガル公園」 
ーメディアと出遇う、環境のアップデート

いま、私たちを取り巻く自然や社会といった「環境」がゆっくりと、しかし大きく変わろうとしています。そうした変化を見極めながら、「教育」も変化していかなければなりません。この展覧会のタイトル「glitchGROUND」は、私たちを支えている大地(GROUND)に、亀裂や断崖など(glitch)が現れている状態を示しています。このような不規則性や不安定性を、忌避し、排除するのではなく、所与のものとして受け容れること。YCAMの教育普及活動ではこうしたスタンスが、私たちを取り巻く環境で生きていくための想像力や身体感覚を生み出す糸口になると考えています。この展覧会では、こうしたスタンスへと誘う創発的な〈環境〉として、大規模なインスタレーションを制作/発表します。
(YCAM4月プレスリリースより)


天井が高い17m四方の部屋の中に、複数の「波」が入り組んで配置され、子どもたちは坂道をすべりおちたり、走り回ったりしている。天井からは巨大な球体の照明が吊り下がる。LEDとスポットライトによって空間の色や配置が変わり、埋め込まれたスピーカーからビープ音や音声が聞こえ、床は埋め込まれた振動子によってブルブルと震える。トンネルの中に空いた小さな穴をのぞくと、公園全体を俯瞰した映像に出遇う。

音響(録音/再生)、照明、カメラ、プロジェクター、Wi-Fiなど、あらゆる道具が埋め込まれたこの公園。来場者が連日おおく、入場規制もかかるほど話題を呼んでおり、子どもたちの走り回る足音や声で賑わっている。室内にあるため、天候などの影響は受けないが、プログラミングされた様々な「シーン」(振動子が震える、マイクで会話できる、ころがるようなビープ音が鳴る)が切り替わることで空間は常に変化する。

- 編み出される使い方 

ぼくが公園を見ていたときに、坂道に開けられた「穴」が実はマイクとスピーカーであり、その関係に気がついた小学生がいた。入力を試し、出力を確認する。ぼくもマイクのところに行って声をだし「聞こえた?」と確認してみると、うん、と頷く。「あー、あー」「ばーか、ばーか」と単純な声が録音され、別の場所で再生される。そうすると、その様子を見た別の子がその行為を真似し始める。こうして、ある発見が伝播し、空間の使い方が変わっていく。


「遊具」の新しい使い方を発明したり、誰かの発明を真似したりするのは、普通の公園でもよくあるし、多くの人が経験したことがあるだろう。コロガル公園では、それがアナログな遊具だけでなく、音声や映像をも含む。それは「ケータイ」に内蔵された様々な機能を、分解し、「環境」として組み直しているように感じた。ワークショップのように決められたプロセスに「従う」のではなく、遊びながら、ころがりながら、出逢ったメディアの使い方を「編み出す」のがこの空間の特徴である。

様々な道具が埋め込まれた環境で遊ぶことで、子どもたちはメディアと遭遇する。その「発見」と「真似」の連鎖によって遊び方/知識は伝播し、アップデートされていく。知識のアップデートだけでなく、環境それ自体のアップデートをも可能にするのが「子どもあそびばミーティング」ということになる。

ミーティングの内容については、また次回。


- おまけ

山口県は魚が超うまくて、タイの煮付けは美味しすぎて叫びました。牡蠣とか、烏賊とか、鱚と梅肉の唐揚げとか。あとは揚げだしのナスも美味しかったし、鱧の湯引きなんてもうふっかふか。また魚食べるの楽しみだなぁ・・・・



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YCAM教育普及展「glitchGROUND」5月19日〜8月12日
10:00~19:00
入場無料 火曜日休館
山口情報芸術センターYCAM

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子どもあそびばミーティング第2回
7月8日(日)14時〜15時30分

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