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2010/12/04

12/03 飲みに行く


大泉学園のスターバックスで珈琲を飲みながら論文を進めていた。関係性のモデルとして以前から考えていた「向き合う」「寄り添う」という2つのモデルを文章化できたことに少し満足しつつ、少し早めの時間に店を出てポラン書房に行くことにした。

奥さんと会話をすると25日に落語の会をやるらしく、クリスマスなのになんで?とか話したり、最近の活動のことを少し話したり、そんなことをしながらお店の中をめぐる。この日は最高気温が23度という異常気象な日だったわけだが、店先の特集コーナーには12月を象徴する絵本が沢山並んでいて懐かしい気持ちになった。ポーランドの仕掛け絵本と『考現学入門』を購入して店をあとにした。

買えなかったエンデ全集に後ろ髪を引かれつつ、電車に乗って中村橋に移動。おジョーと待ち合わせをして、恵比寿の写真美術館で開催中の『ラヴズ・ボディ』の招待券をもらった。二人で中古ゲームショップに行って、DSのコーナーに並ぶゲームについてあーだこーだ言いながら、あんどーなつと待ち合わせの18時まで、時間をつぶす。

おジョーと別れてあんどーなつと落ち合う。「トロッコ列車」という行きつけのコジャレた居酒屋に入り、ビール2つとカキフライと豚の角煮を注文した。ここの店員さんは、シャイなんだけど明るく振舞うことを精一杯やっている、感じのいい人だ。少しだけ高めなのが難点だが、料理は美味しい。

疲れ気味のあんどーなつと飲みながら、先日のオープンミーティングのことを話した。おもむろにカバンから封筒を取り出し、

「一通だけ後から届いたんだよ。西大泉児童館の秋山館長から。」

と、アンケートを渡してくれてた。秋山さんはぼくが児童館のリサーチを始めた2007年にかばちゃんの相方として職員をしていて、次の年に西大泉児童館の館長になった女性。秋山さんはそれ以前にも西大泉で職員としてかばちゃんと組んでいて、かばちゃんが移動してその後相方を務めたのがあんどーなつだった。

そんな秋山さんのアンケートからは、あの場を面白がっていたことがひしひしと伝わってくる。なんだか分からないけど、奇妙に高揚した感じがそのふであとから伺うことが出来た。

「あの場所で、職員の価値観ではできないことができるかも…っていうふうに、胸がざわついた人たちがたくさんいるとおもうんだよ。その空気を感じた」

と、あんどーなつ。

その後Nadegata Instant Partyの話になる。巻き込む対象は、しげじゃないんじゃないか?と話したり。「しげはもうスタッフだから。中村児童館の職員だからね。風雅とかいいんじゃないか。」あんどーなつは風雅をしきりに押していた。ぼくはあいつのこと、廊下とかではふざけるけどステージ上では恥ずかしがって出来なくなるタイプかと思っていたのだがそうではないらしい。パフォーマンスするのが大好きで、放っておいたらずぅーっとネタをやってるようなタイプなんだって。
ぼくは、しげじゃないとしたら、ひろしやたくやなんじゃないか?という。ひろしはむちゃくちゃ頭がキレるし、中村中出身じゃないから、また別のネットワークを持っている。たくやは優しくて昔からの馴染み。あるいは野田さんが力を発揮して、女子たちをそそのかすとか、そんなふうにナデガタが中高生をどんなふうにいじるのか、いろんなパターンを想像して楽しんでいた。

「ナデガタ、特に中崎くんにまだ「職員」としか思われていない気がして、オレはもっと話がしたいんだよ。基本的に彼らがどんなにヤバいことをしようが受け入れるつもりだし、あんまりやばかったらそりゃぁストップかけるしさ。山城くんも中崎くんも、なんだか躊躇してるんじゃない?」

「オープンミーティングの時だって、「大人の遊びしてみぃひん?」っていう呼びかけに、奴らは一瞬エロいこと考えたわけさ。地域の人達だって、エロいこと妄想してざわめき立つ奴らみて、「全くこの子たちは」ぐらいにしか思わないでしょ。児童館にエロいこと持ち込むぐらいの、そのぐらいのことしてもいいと思うんだよ。おれとかちえちゃんが「ちょ、ちょっと、ここは児童館だから!」って突っ込む演技するからさ。そのぐらいでいいのに、山城くんは「っていうのは<仕掛ける側>になろう、っていう意味で」ってフォローしちゃった。もっと悪ふざけしていいのに。」

たしかに、山城さんも中崎さんも躊躇がある気がする。なんだか『24 OUR TELEVISION』以降、少しずつ毒が抜けてきた気がするのだ。やっぱり美術館が舞台になると、毒素の強いことができるのかなぁ?アートの制度に守られたところのほうが、彼らは力を発揮するのかなぁ。

「今年の2月のナデガタのプラン発表は徹底的にふざけようね。正装してさ、プレスもたくさん呼んで、「2011年のプランが決まりました。やってみなければわかりません」みたいな、何も決まってないのをポジティブに行ったりしてさ、その後の宴会でしげが泣いたりして、「ほんとやってよかったです!」みたいな盛り上がり見せちゃって、それで実は何も決まってない、がーん…みたいな感じとかさ、面白いじゃん。」

たしかに面白い。でも、児童館っていう場所はすべてが遊びになってしまう。ナデガタはこれまで、遊んじゃいけない場所で遊んでたから面白かったのだ。遊んでいい場所で遊んでも面白くない。例えば、児童館という遊びのための場所で、ガチなことをする。ホームレスの宿にするとか、なんかそういうガチなことしたら面白いんじゃないかとも話した。

なんだか安藤さんとたくさん共有できた気がする。来年、24 OUR TELEVISIONを超える、ガツーンと強烈な作品を作ってほしい。

「ついぞびっくりしたことがない人間なんだよ。ナデガタはおれのことびっくりさせてくれるんじゃないかって、本当に楽しみなんだ」

それはぼくも楽しみだ。

2010/12/03

12/02 打ち合わせ

三脚を2台担いで家を出て、新宿で時里くんに渡す。先週のオープンミーティングの撮影で使ったもので、彼の大学から借りていたのだ。荷物の受け渡しは毎回大変。こんなとき心底車がほしいと思う。

新宿から埼京線と京浜東北線を乗り継いで、南浦和で下車。西口の喫茶店で小沢剛さんと打ち合わせ。以前お会いしたときタバコを吸っていたイメージがあったので、気を使って喫煙席で待っていたら、タバコは吸わないそうな。

「もらいタバコを時々吸うぐらいだよ」

なんだか納得させられた一言だった。なるほどね、そういうことか、と。具体的にどうというわけではないのだけど、彼の作品と人柄のつながりがふと見えた。

打ち合わせは、打ち合わせというよりも僕の個人的な興味を次々と質問していった感じだ。美術館をどう捉えているのかとか、ノッポさんのこととか、子どもの頃のこととか、作品のことや、図録や作品集などの出版のこと、税金の使い方のこと…。

「アーティスト・イン・児童館」を作るときに、小沢さんの『相談芸術』シリーズを参照していたこともあって、彼への興味はやはり尽きない。「昭和40年会」のようなコラボレーションワークも多く、快快や安野太郎さんなどとは世代を超えた、「西京人」では中国人、韓国人、日本人の国境を超えた活動を展開している。彼の柔軟性とコミュニケーション欲をぼくは見た気がした。

でも、「具体的に絵を描いたり彫刻を作ったりはしていないけど、根底にあるのは美術の制度とか、"描くこと"なんだけどね。」と彼は言い切っていた。そこをぜひ語ってほしい、と話した。

山本さんと小沢さん、二人が顔を合わせるのは9日後。アーティスト・イン・児童館というプログラムが持っているネットワークが人を集め、一同に顔を合わせる日になる。


2010/12/02

12/01 ついに

昨日の朝からずっとつくり続けてきた2011年度の事業計画書。いつだったか、ふと「展覧会をやりたい」と思い立って、事務局に提案して、名古屋で山本さんに話して、松戸で西尾さんにも話して、高円寺で野田さんにも話したな。そんな経緯が形になった書類だったわけだ。

なぜか六本木アートナイトの打ち合わせに巻き込まれ、森ビルの49階に上がるはめになって森アーツセンター内に入って企画の交渉に参加したわけだが、なんとかうちの事業計画書を渡し、来年はメディア展開を充実させたい、その一環として展覧会をやりたいのだ、ということは伝えることができた。突っぱねられると思っていたこの提案を、受け入れてもらえたことに驚いた。

来年はゴツコーンと大きいのを打つ。「美術館はいらない」とか「美術の制度から自由になる」という流れから降りて、ぼくは美術の制度に乗る。

2010/11/30

11/28 水戸芸術館「アンサンブルズ・フェス」

オープンミーティングの翌朝、もぞもぞと起きて東京駅からバスに乗り込み水戸へ移動。

大友良英「アンサンブルズ2010 共振」のオープニングイベント「アンサンブルズ・フェス」へ。展覧会場のいろんな箇所で、即興演奏やセッションが始まる、フェス。山本精一、山本達久、テニスコーツ、梅田哲也、七尾旅人、カヒミ・カリィ、そして大友良英。

美術館の中でパフォーマーが台車に乗ったり歩いたり、移動しながら即興や予定していた曲を演奏する。演奏する人の奇妙な身体性を浮き彫りにする異質な風景がところどころに立ち上がっていきます。しかし、徐々に観客が地べたに座り「客席」をつくりはじめたところから、異質さが薄れていきました。ぼくたちは音楽の消費の仕方を知っています。体を揺らしたり、手拍子をしたり。それをし始めた瞬間に、美術館であるにも関わらず音楽を消費する空間になってしまったように思いました。美術をもって、僕達が知っている音楽の消費方法を解体しようとしたのかなぁ。もう少しラディカルな解体が観たかった。

展覧会はまだ見ていない、と言っておきます。繊細な音たちの集合はきっと素晴らしい体験になるはず。もう一度行こうと思っています。

大友良英「アンサンブルズ2010-共振」 
欧文表記:
Otomo Yoshihide "ENSEMBLES 2010: Resonance"
会期:2010年11月30日 (火)~2011年1月16日 (日)
開館時間: 9:30~18:00 *入場は17:30まで
会場:水戸芸術館現代美術ギャラリー
休館日:月曜日・年末年始12月27日 (月)~2011年1月3日 (月)
*ただし1月10日(月・祝)は開館、翌11日(火)休館
入場料:一般800円、前売・団体(20名以上)600円
中学生以下、65歳以上・障害者手帳をお持ちの方と付き添いの方1名は無料

2010/11/29

11/27 オープンミーティング第2会

西尾美也さん、北澤潤さんをゲストに、中村児童館でアーティスト・イン・児童館のこれまでの検証をしてきました。

児童館的な活動の在り方と、即興的で偶然を取り込んでいく余白のデザインをするアーティスト・イン・児童館のノウハウの共通点を見いだせたことは大きな成果だと思います。

なんだか有名になってきたこのプログラム。北澤くんの学童保育時代の先生が目黒区の児童館の館長になっていて、今度はアーティストとして北澤くんに出会いなおしたり、本番中にもいろんなコメントをもらえたりして、本当に充実したイベントでした。

しかし、トークイベントというメディアの機能はぼくもよくわからなくて、あれはやはり政治的な場だったり、キャンペーンだったりするわけです。新しい言説を生み出すような場所には成り得ないと思います。広報活動の一環としては、もちろん重要なわけですが。

しかししかし、飲み会では皆満足した様子で、とても楽しそうでした。いろんな言葉が交わされたこと自体に満足したのかなぁ。コミュニケーション欲が満たされたということでしょうか。ぼくはやっぱりもっと手応えのあるパフォーマンスがほしいです。ビジュアライズされた、あるいは言葉を超えた表現が児童館のような場所から生まれる光景を見たい。